用の美

大学生の頃、研修旅行で京都に行った時、「河井寛治朗記念館」に
行ったことがある。そこは、寛治朗さんの自宅兼仕事場だったところ
なのだが、なんて素敵な建物なんだろうと感激した事を覚えている。
その日は、あいにくの雨だったのだが、その雨がとっても似合う佇まいだった。
こんな家に住みたい、今も憧れの建物である。
 寛治朗さんは、民芸運動の人だ。
「民芸運動とは、古い日用品を発掘しその制作のための技術を復活させ、
無名職人による日用の美を世に広め、新しい日用品を制作し普及しようとした
運動。(Wikipediaより抜粋)」
 記念館でみた器たちは、とてもシンプルな形をしていて、白い色と
野の草花を簡略化してパターン化した絵付けのものが印象に残っている。
決して派手ではないけれど、じっくり大切につかい込むうちに
味がでるような素朴な感じ。
 話は変わるが、大学当時、料理好きな親友がいた。
冬休み明け、食事の誘いを受け彼女のアパートに遊びに行くと、
美味しそうな料理の数々が食卓に並べられていた。
特に目を惹いたのが、笹の葉をのせた、白地に紅の花模様の絵皿に
盛りつけられた、野菜を肉で巻いた料理。
料理も美味しかったけど、その料理に合うお皿を選んで、わざわざ
笹の葉を草むらからとってきた、その行為が、とってもあったかくて
嬉しかった事を覚えている。
彼女は、自然に用の美を楽しんでいるような人だった。
こんな事かいたら怒られるかもしれないが、ある時は
ゴミ置き場からイイ感じにつかい込まれたレトロな木の食器棚を
ひろってきた事もある。
またある時は、木の枝で、ランプシェード(かなり大きめ)を
作って、部屋のインテリアにしていた。
きっと彼女は普段からアンテナを張り巡らせているんだと思う。
そんな彼女の近くにいると、楽しくて仕方なかった。
私も彼女にかなり影響を受けた。当時買った食器類は、未だに大切に
つかっている。彼女と交換した食器もあり、つかう度に彼女を思い出す。
きっと今も、素敵に用の美生活を楽しんでいるんだろうなあ・・・。

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